ドイツ語だけじゃない!関口存男著『素人演劇の実際』が凄い
関口存男著『素人演劇の実際』
こんにちは!楽劇座の五條なつきです。
関口存男先生の『素人演劇の実際』を純先生からお借りしたのでようやく読みます!
— 五條なつき@5.26-30楽劇座公演『マカロンちゃんの憂鬱』 (@natukig) 2018年5月6日
先に読んだ純先生&蓉子さんによると、楽劇座の演技演出方法とほぼ同じと言ってもいいぐらい近い事が書いてあるのだとか。
楽しみ楽しみ💗
…という事で、関口存男先生の『素人演劇の実際』を読んでみました。「関口存男と言えばドイツ語!」という印象があるかと思うのですが、これが日本演劇界にも相当な功績を残した方であるというのがこの本からだけでも伝わってくるのです。
あまりに感動したので、内容をほんの一部ではありますがご紹介させて下さい。
こんな内容です
関口存男先生が、疎開先の妻籠で子供達の演劇「いつまでも続くお話」を創る過程が書かれています。
お写真は台本の一部です。上2枚が坪内逍遥先生の原作、下は関口存男先生の脚色版。子供向けのものを大人が観ても面白いと思わせる工夫や、当時の妻籠の生活に合わせた追加が目立ちます。戦後の事なので「お米の配給」などが冗談で使われたり。
関口存男先生が脚色された方の台本には、それぞれの台詞に番号が付けてあって「何番の台詞はこう言わせた、こういう動作を指示した…」と細かく解説して下さっています。
何が凄いの?
私は読み終わって、というよりもう出だしの部分から「この本、本当に凄い…!!」と興奮してしまいました。
おそらく、演劇をやった事がある方でないと分からない部分もあると思うのですが…この本を読んだ直後の私のつぶやきがコチラです。
関口存男著『素人演劇の実際』読み終わり。
— 五條なつき@5.26-30楽劇座公演『マカロンちゃんの憂鬱』 (@natukig) 2018年5月8日
この本、凄いです。全ての演劇系大学や専門学校で教科書にすべき。
関口純先生が今の楽劇座でやっている演技法も合わせて現代版に直したら、間違いなく日本演劇界で必須の演技・演出の教科書になります。
そのぐらい理論的に演技や演出を解説してる! pic.twitter.com/G1tYmmzc6n
台詞には番号が付いていて「何番の台詞でこう言わせた、こう動作をつけた」と全て書いて下さっています。
— 五條なつき@5.26-30楽劇座公演『マカロンちゃんの憂鬱』 (@natukig) 2018年5月8日
「ねぇ、関口存男先生ってドイツ語学者でしたよね?これもう絶対プロの演出家でしょ!?」
と確認したくなるレベルです。全てが理論的で細かい。演劇やってる人間から見るとよく分かります。 pic.twitter.com/7zGSx6VU2M
私はずっと日本の国立大学に演劇科がないのが不思議だったのですが、日本だと演劇は音楽や舞踊に比べてまだまだ型や理論がしっかり成立していないのが一因だと思うんです。
— 五條なつき@5.26-30楽劇座公演『マカロンちゃんの憂鬱』 (@natukig) 2018年5月8日
ただ「気持ちを込めて!」と言うだけの指導者の何と多い事でしょう…。
気持ちも大切ですが、技術はもっと大事。
関口存男先生のこの『素人演劇の実際
— 五條なつき@5.26-30楽劇座公演『マカロンちゃんの憂鬱』 (@natukig) 2018年5月8日
』は、もしかしたら日本演劇界に、演技や演出をきちんと理論立てて示してくれる最高の本かもしれない。
表現が古いところもあるので改訂は必要だと思いますが、多くの俳優・演出家を志す人が手にできるよう、絶対に出版すべきです。
こんな名著があったなんて!
それにしても、読み終わっても改めて関口存男先生と楽劇座の演出・演技法は似ています。
— 五條なつき@5.26-30楽劇座公演『マカロンちゃんの憂鬱』 (@natukig) 2018年5月8日
いつもお稽古で関口純先生から言われている事がそのまま書いてあるのでびっくりしながら読み進めました。純先生もごく最近読んだとの事なので、本当にビックリされただろうなぁ…(笑)
…私の興奮が伝わりましたでしょうか?(笑)
もうとにかく演劇・演出の技法が丁寧に解説されているんです。ご本人も紙面上では限界があると書かれていますが、それでも文章で伝わる最大限の内容!!
挙げていくとキリがないのですが、例えば「未熟な指導者がやりがちな失敗」「演劇の台詞と動きの関係は音楽でいうところの歌詞とメロディであり、有機的に結びつけて暗記すべき」「人間は眼は良いが耳は理解にちょっと時間がかかるので、動きが先で台詞が後」「捨て台詞の効果的な言い方」「長台詞の工夫」「下手な役者を使う場合の解決法」「大きな声を出したいなら鋭い声を出す」などなど。どれも「なんとなく」ではなく、きちんと理論的に解説して下さっています。
日本の演劇って世界から見るとまだまだ遅れていて、未だに「もっと気持ちを込めて!」「もっと大きな声で!」と繰り返し言っている指導者や演出家も多いです。
もちろん気持ちは大切ですが、もっと大切なのは「その気持ちがどうやったら狙い通り、的確にお客様にも伝わるのか?」「ただ大きな声を出すのではなく、その大きな声で何をどう表現しようとしているのか?」という理論や技術です。
この『素人演劇の実際』には、気持ちで乗り越えようとするのではなく、きちんと技術や理論で「演技」を成り立たせた過程が書いてあります。タイトルには「素人演劇」とありますが、プロにも充分通用する内容です。
そしてこれら存男先生の演技・演出論は、驚く事に関口純先生が創る楽劇座の舞台とほぼ同じなんです。(Twitterにも書きましたが、なんと純先生もこの本を読んだのは最近との事。DNAって凄い!)本当は青山杉作先生達と共に演劇の道に進みたいという強い志がありながら、その天才的な語学の才能のためにドイツ語学者への道を歩んだ存男先生が、曽孫の純先生にご自身の意志を継がせたのでしょうか?不思議な事ですが、本当にそう思わずにはいられないほど似ています。
この『素人演劇の実際』、現代版に改訂して出版されれば、間違いなく日本演劇界で俳優・演出家を志す人のバイブルになります。いや、ご縁があるからには何とかしなければ!!と勝手ながら熱い使命感に燃えている私です(笑)
ちなみに現在のところは、三修社様より出版されている『関口存男著作集』に収録されています。
昔の文章なので、漢字が現代と違って慣れないと読みづらい部分もあります。また、現代だと怒られそうな文章も多数…(笑)ですがそこも存男先生らしいところです。
著作集という事で、ちょっとお値段はお高めなのですが、その価値はあると思います。でもやっぱり、この名著『素人演劇の実際』はもっと多くの方に読まれるべき内容なので、やっぱり何とかして演劇を志す全ての方のお手元に届くような本にしたいです。(大げさだと思われるかもしれませんが、本当にそのぐらい素晴らしい本です!)
ちょっと熱が入りすぎてしまいましたが(笑)、この本には日本の演劇における演技・演出の基礎が書かれていると言い切ってもいいぐらいです。存男先生のドイツ語関係でのご活躍はもちろんですが、これまでその後ろに隠れていた演劇関係での功績が世に出たら、とにかく演劇が大好きだったひとりの「おじさん」(著書の中で、存男先生ご本人がご自身をこう呼ばれている箇所があります。)でもあった存男先生はきっと喜ばれる事でしょう。
★★★次回出演情報
5月は2.5次元メルヘン劇場【マカロンちゃんの憂鬱】にマカロン役で出演致します。可愛いだけでない、皮肉だらけのブラックユーモア満載なお菓子の世界をお楽しみ下さい。
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